8人が本棚に入れています
本棚に追加
日曜日。
待ち合わせは、とりあえず渋谷。
香奈と翔君は、待ち合わせも待ち合わせて来たみたいで
私が駅に着くと、密着させていた体を慌てて離した。
「いいよ、そのままで」
今のうちにいちゃいちゃさせててあげよ。
私は、二人からちょっと離れた場所に立った。
ごちゃついた景色に目を向けていると、後ろから肩を叩かれた。
直君、登場。
初めて見る私服の彼は
きっちりしたジーパンに、海がプリントされた白い半袖Tシャツ。
左に丸みを帯びたグレイのショルダーバッグを、右にカメラを提げている。
「なんかあっち、声掛けにくくて」
香奈と翔君は、私のさっきの言葉をきっかけに、すっかり二人の世界に入り込んでる。
「香奈ー、直君、来たよ」
私たちは一つの場所に集まった。
「で、マジでどこ行くとか決まってないの?」
「うん」
直君の質問に私が答えてる先から香奈が口を出す。
「うちらは決まったけど、どうするの、あんた達は?」
「ちょっと待った、何、うちらはって?」
「翔と私、竹下通りぶらつく予定だけど、美咲、人混み嫌いでしょ?」
「俺は人混み、嫌いじゃないけど、さすがにあれはムリ」
と、直君。
「じゃ、美咲と直君は別行動ってことで」
あっけらかんと宣言する香奈に私は呆然とした。
「ダブルデート、じゃなかったの?」
「臨機応変って言葉もあるでしょ」
嘘だ、最初からこのつもりだったんだ。
香奈は、私に成功の笑みを向けると、翔君と駅の方に消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!