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香奈と翔君が去って、一気に空気が静まる。
変に気まずい。
帰りたい。
それをどう言い出すか悩んでると、直君が口を開いた。
「どうする、帰る?」
まさに助け船。
私は頷いて、そうしよっかって言えばいいだけ。
なのに。
「せっかくだし」
私の口から出てきた言葉がこれ。
またやっちゃった。
直君は、私の返事に、ちょっと意外な顔をしながらも
「じゃ、どこ行く?」
「どこでもいいよ」
「まったり、公園とかどう?」
「いいよ」
私は、直君とデートするハメになった。
公園って言っても、この辺は地元じゃないし、デートらしい公園ってことでは
代々木公園しか思いつかず、そこに決定。
渋谷から代々木が近くて良かった。
じゃなかったら、電車に乗ってる間がキツかった。
間が持たないとか、そういう問題じゃないんだもん。
一応、何か言わなきゃいけない気がして
「それ、カメラ?」
と聞いてみたけど、見れば分かる的な質問をしたことに私は恥ずかしくなって
直君の
「うん。暇なときは、いつも持ち歩いてるんだ」
というボールを受け取れず、後は駅に着くまで、二人とも沈黙。
ケータイで遊ぼうにもそれは失礼だし
周りに目を向けてもカップルばっかり。
どのカップルも、腰に手を回したり、目だけで会話してみたりしてる。
香奈と翔君も、今きっと同じ状態。
私は視線を落として、ちらっと直君をうかがったけど、直君もうつむいてるだけだった。
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