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翌日はもちろん、香奈の質問責め。
「どうだった、どうだった?なんかあった?」
「何もないって」
「なんにもない分けないでしょ、一日中一緒に歩いたんでしょ?」
「一日中って言ったって、直君が写真撮るの見てただけだし、帰る方向も違うし」
「でもさー、ほら、どんな話したかとかさー」
「なんも」
「でもさー、写真について聞いたとかくらいあるでしょ?」
香奈は、でもさー、を連発し、ちょっとした変化も見逃すまいとしてる。
「まぁ」
「ほら、してるじゃん。で?」
「花の写真をよく撮るんだって」
「そかそか。あとは?」
私は、他に何か聞いたかどうか記憶をたどる。
花・・・。
あ。
「そういえば、普通の花壇とかより、雑草の方が好きだとかなんだとか言ってたな」
そう、直君が、この花きれいだね、って話しかけてくるのは、雑草ばっかりで
私が、こっちもきれいだよ、撮ったらって花壇の花を指したら
そんなことを言ったんだった。
「ほう。それで?」
興味深そうに聞いてくる香奈に、私は首を横に振った。
(人の写真って結構難しいんだよ。俺にはまだまだ)
直君のその言葉も思い出してたけど、なんだかそれは言いたくなかった。
ふうん、と、つまらなそうにする香奈に私は罪悪感を覚えて
「でも」
「でも?」
「悪くなかった、かも」
香奈の目が、にやっと笑った。
あ、バレた。
普通に感想を言ったつもりだったのに。
香奈には適わない。
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