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女の子って、一度、恋心に繋がるものを見つけたら
後はどんな些細なことでも、それは独立して一人歩きするみたい。
そしてそれは、私の体を乗っ取っていく。
だって私ってば、気付くと直君の側に行こうとしてる。
今までの無礼な態度から、いきなり気軽に話しかけることは、さすがにためらわれたけど
幸いなことに、直君は毎日、写真を持ってきて見せてくれるから
話のきっかけには困らなかった。
花の写真は、もちろんいっぱいあって、次に多いのは動物の写真。
野良猫とか、散歩中の犬とか、番犬とか。
一番少ない写真が人。
みんな笑顔でいい感じ。
直君が好きだから、彼が撮る写真まで素敵に見えただけかも知れないけど
どの写真もみんな、私は好きで
それなのに、ありきたりの感想しか言えない自分が悔しかった。
「この犬、可愛い」とか、「この花、きれい」とか、「このネコの柄、変」とか。
私は小学生か。
そう思っても、直君と話したいのが先立って、こんなことしか言えなくなる。
それでも直君はいつも嬉しそうに、うんうんって言ってくれて、ますます好きになる。
香奈に
「あんた別人なんじゃないのー?」
って、からかわれても、直君とこうやって過ごす休み時間は、手放したくなかった。
表面的な関係しかできなくて、もどかしくも大切な時間がいくらか過ぎ去ったある日。
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