美咲の章:1.それだけのこと

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ゲーセンオリジナルバージョンのリラックダの枕は、私が持っているのより大きかった。 「どう、あれ欲しい?」 UFOキャッチャーのガラスに顔を近づける私に、香奈は企みの笑顔を浮かべてる。 「欲しい。けど、私じゃ取れないよ」 「美咲、これ苦手だもんね」 初めて二人でゲーセンに行ったときから、UFOキャッチャーは香奈任せ。 「取ってあげよか?」 「いい、諦める」 「なんでー?」 「だって香奈、なんか取り引きし掛けてきそうなんだもん」 「あれー、なんで分かったー?」 やっぱり。 分かるよ、それくらい。 私は、香奈の同情を引くように、がっくり肩を落としてゲーセンを出ようとした。  「待って待って」 香奈が私の行く道をふさぐ。 「じゃあ、3回。3回以内に取れなかったら、無条件でそなたに授けよう」 いくら香奈でもさすがにそれは無理でしょ。 そう思って、私は乗った。
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