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「……何でだよ…?」
葎は下を向いたまま呟いた。
アタシは無言で立って服を着始めた。
「ちょっ…!?待てよ、帆波!!」
服を着終えるアタシの手を葎が掴んだ。
「離して……?」
アタシは目に涙を溜めながらかすれる声で言った。
「待てって!」
「待たない!」
「お願いだから待てって!!」
「待って何になるの!!?」
葎以上にアタシは声を張り上げた。
「アタシね、葎のことが好きだったの。ずっと…ずぅーっと昔から…。だけど、貴方の一番はいつも他の誰かだった…。それが悲しくて…悔しくて…隣にいる女の子が羨ましくて……。アタシは弱い人間だよ?浮気相手でもいいから葎の傍にいたい…葎に抱かれたい…だから貴方の言葉に頷いた。初めてもあげた。凄く痛かったけど…それでもアタシは幸せだったよ…?心が満たされなくても、隣にいれるならそれだけでいい…本気でそう思ってたんだ……。けど……」
葎はアタシの話を黙って聞いていた。
「それももう…限界みたいなの……。これ以上葎とはいられないよ……ごめんね?葎の役に立てなくて…。だから…アタシの手は離して、彼女と仲良くしてよね……?」
そう言うと、葎はアタシの手を掴む力を緩めた。
「じゃぁね…」
パタン
部屋の中には…
ドアの閉まる音だけが虚しく響き渡った…
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