序章、道なき道の上

12/14
前へ
/442ページ
次へ
      「……やっぱりさ、オレ音兎と行くよ」      へへ、と笑いながら、キャンスァルは音兎の横に立つ。     「……話し聞いてねぇのかよ? 魔族だけじゃなく、人間とも争う事になりかねないぜ?  それこそ、恩人とかともなぁ」      それを言われるも、キャンスァルは気にせず歩く。     「大事な親友を一人になんて出来ねぇって、それにさ……」      笑いながら、キャンスァルは自分より背の高い音兎を見上げる。     「人間と魔族が共存出来たら、あんな事起こらないだろうし……さ」     「……共存なんざ、出来るかどうかも解りゃしねぇぞ」     「だけど、音兎は信じてんだろ?」     「たりめぇだろ」      当たり前の事の様にそう言う音兎に対し、ならさとキャンスァルは両手を頭の後ろに置きながら、屈託の無い顔で笑いながら言った。     「音兎が信じるなら、オレも信じるよ。  それが友達ってもんじゃん?」      アクルもほっとけないしさ、と言って、頭を掻くキャンスァルを見ながら、音兎は笑う。     「馬鹿だなおめぇは。        …………ありがとよ」      そして、静かにうつ向いた。
/442ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加