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景色がどこか、どことなく暗く、黒く感じる。
色が妙に濃いというか、自然に無さそうな色をした華々。
何度か眼を擦ってみるが、形すら不安定に感じた。
お花ってこんなだったったかな?
窓から観えた景色との違いに悪流は戸惑う。
「どしたん?」
「いえ、その――――」
どうしたんだろう?どうした?
目眩を感じながら、景色だけでなく感覚も不安定になる。
あたしは今ちゃんと立てている?足。足はどこ?地面は?あたしは――――
「そこから先には、行ってはいけませんよ?」
不意に聞こえた声に、悪流はハッとする。
とても、とても穏やかな澄み切った様な声だった。
穏やかで、静かなのにとても凛とした。
「…………誰?」
花畑の中、立つその女性に悪流は問い掛ける。
黄金より淡く。しかしそれより輝かしくすら感じる流るる長い金の髪。
母なる海、とでも喩えるべきなような碧い瞳。真っ白な肌。
周りの景色が霞む程に、その女性は美しい。
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