間章の一『聖女』

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 景色がどこか、どことなく暗く、黒く感じる。  色が妙に濃いというか、自然に無さそうな色をした華々。  何度か眼を擦ってみるが、形すら不安定に感じた。  お花ってこんなだったったかな?  窓から観えた景色との違いに悪流は戸惑う。 「どしたん?」 「いえ、その――――」  どうしたんだろう?どうした?  目眩を感じながら、景色だけでなく感覚も不安定になる。  あたしは今ちゃんと立てている?足。足はどこ?地面は?あたしは―――― 「そこから先には、行ってはいけませんよ?」  不意に聞こえた声に、悪流はハッとする。  とても、とても穏やかな澄み切った様な声だった。  穏やかで、静かなのにとても凛とした。 「…………誰?」  花畑の中、立つその女性に悪流は問い掛ける。  黄金より淡く。しかしそれより輝かしくすら感じる流るる長い金の髪。  母なる海、とでも喩えるべきなような碧い瞳。真っ白な肌。  周りの景色が霞む程に、その女性は美しい。
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