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「……ざまぁねぇな、不覚をとっちまった」
眉間に皺を寄せながらぼやく走馬の話しを聞きながら、音兎は固く、硬く堅く拳を握る。
そんな大事な刻に、私は、この音兎様は呑気にお寝んねしてたってのか? はっ、畜生が。
「……兄貴」
奥歯を破れんばかりに噛みながら、音兎はどうにか声を絞り出して、走馬の前に両膝を着く。
「あい……つぁ、たんなるガキなんだ。 ちょっと変わった奴で、臆病な癖に妙な所で肝が座ってて……」
音兎は思い出す。多分、とても勇気を振り絞り言ったであろうアクルの言葉を。
友達になってくれという、あの言葉を。
「頼む兄貴! 私に、この音兎に行かせてくんねぇですか!?
兄貴が連れ戻せなかった奴を、私が連れ戻すなんて、あまりにも大それた事言ってんのぁ解る……けど、けど……
――――あいつぁ、私の親友なんだ……!」
しばらくの間、走馬は音兎を、義理妹の姿を眺める。
「……しばらくは、大掛りには動けねぇ。 この集まりは、一時解散って事になる」
煙草をくわえながら、走馬は音兎の頭を撫でた。
「その間は、お前の好きにしな」
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