序章、道なき道の上

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       そこは深い森の中で、気持ちの良い快晴な空の下だった。      静かに流れる川の近くに、ワイバーンと呼ばれる生き物がいた。      その巨大な体、前足が翼となるトカゲの姿をするそれは、聞いた事くらいはあり、容易く想像くらいは出来るであろう。      違いがあるとするなら、その頭が無惨にも潰れていて、赤黒い液体をあたりにぶちまけている事であろうか。      そのワイバーンの近く、独りの少女が川の流水で手を洗っていた。      黒い、艶のある髪は、肩に届くか届かないかくらいの長さで、無理矢理切ったのか、あまり整っていない。      手足は枯れ枝の様に細く、大きな目は虚ろで、どこを見ているのか定まっていない。      上に胴着の様な衣服を来て、長めのズボンをはいたその姿は少年にも見える程に貧相であった。
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