序章、道なき道の上

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 その少女、檜山 悪流は手についた返り血を洗いながら、ぼんやりと考え事をしていた。      酷く、虚ろに。 手を、指をごしごし洗う。     「ちょっ!アクルアクル!」     「……はい?」      頭の中に響く、相変わらずおちゃらけた魔王の声に悪流は返事をする。     「ちょっ、パネェ! もげとるもげとる! 指もげとる!」      言われてふと視線をうつすと、千切れた自分の指が流れて行くのが瞳に映った。      再生していく指を眺めながら、悪流は笑う。     「あはは、洗っても洗っても落ちないなって思ったら。  ……そりゃ落ちませんよね」     「指は落ちまくったけどな!  うっは!我上手い事言った! 誰うま誰うま!」      相変わらずハイテンションな魔王に軽く微笑み、悪流は立ち上がり茶色っぽいマントをはおって、食べ物や着替え等の入った袋を握る。      確か悪流が独りふらふらしている最中、荒れた山小屋で見掛けてかっぱらったやつだったなと魔王はふと思い出した。
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