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「心の傷は、簡単には癒せませんけど……特に、貴女は本当に辛そうですね」
下唇を噛みながら、無言で俯いている悪流を見つめながら、ヴァルアは一歩歩み寄る。
「……憎しみを忘れて、とは言いません……言えません。
ですけど、どうでしょう?」
ヴァルアは、月の光りの様な淡く、優しい笑みを浮かべたまま悪流にもう一歩、歩み寄る。
「少しだけ……少しだけ、私達の所で暮らしませんか?
急ぐ旅でも無いと思います。いろいろと、準備を整える事が出来るかもしれませんし」
この子の痛みを癒せるのは時間だけだろうとヴァルアは思う。優しい、穏やかな時間だけ。
だから、それを……自分に本当に出来るのかは不安だが、少しでもその時間を提供出来たら。
せめて、この子がしっかりと笑えるようになるまで。
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