間章の十六、『美しい名前』

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「……万龍は。あの蜥蜴大明神は、ガチでパネェ強さだぜ。  我の全盛期でも、五回やって一回は負けるかもなってくらいだ。」  魔王の言葉と真剣な眼差しに、悪流は少しだけ息を呑んで。同じく真剣な眼差しを向けた。 「……あんた、そういう時本当にいい目をしてるわ。」  その眼差しに対し、魔王は微笑みを浮かべた。 「……我はさ、身投げしたアンタにいい景色見せてやりたいな、とも思ったんだぜー。  我が生きてた頃に見てた景色。仲間が、ぶーぶー文句を言いながらも我に付き合ってくれたりさ……」 「……あたし、いろいろ見れました……いろいろ、見れたよ。」  夕日をみながら悪流は微笑む。 「沢山の素敵な方々の輝きを、この目であたしは確かに見た。」  魔王はちょっと目を丸くして、はにかんで笑った。
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