間章の十六、『美しい名前』

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「……そっか。んじゃさ、アクルたんは万龍との……いや、おまいの気持ちと決着つけた後は……どんな景色を見たい?」 「そうだなぁ……あたしは……」  ほい、と魔王の人差し指を眉間に当てられ、わっ、と悪流は眉間を押さえる。 「何を……」  悪流は、自分の髪が急に伸びた事に気付く。それともうひとつ。 「我からの二つの贈り物。やっぱアクルたんには、みつあみが似合うと思う訳なんだぜ。」 「あっ……。」  長い自分の髪を見詰める悪流の頭に、ある記憶が浮かび上がる。 「もひとつ。勝手ながら、同化してた際にアクルたんの記憶の奥の奥覗かせてもらったんだぜ。  アクルたん。おまいの母ちゃん、おまいにスゲー辛くあたってたけどちゃんとおまいを愛してたみたいだぜ?」 「……。」  知っている。あんな態度だったけど、この歳までちゃんと育ててくれた母のなけなしの愛情を。  そして、魔王が最期に記憶の底から引っ張り出してくれた記憶。  生まれる前の産まれる前の記憶。お腹の中にいた時の記憶。  優しい優しい、母の声を確かに聞いていた記憶。確かに確かに、愛されていた記憶。
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