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「……。よう、起きたのか。」
テントの中に入って、音兎はアクルに声をかけた。
本当はもっと早く起きていたのを知っていたが、声を押し殺して泣いているのが解ったので入りにくかったのである。
「……音兎さん。」
音兎の姿にアクルはぎこちない笑みを浮かべた。
「髪、伸びたじゃねーか。」
アクルの長く艶やかな黒髪を見て、音兎は小さく笑う。「編んでやろうか?」
微笑みを浮かべながら、そうですねとアクルは呟いた。「お願いします。」
音兎の手がアクルの髪に触れて、丁寧に編んで行く。
「おっ。起きたんだな。」
右腕の無いキャンスァルがそこに入って来てアクルは少し目を見開き、顔を伏せる。
どした? とキャンスァルは笑いながら、左手に持った煮魚の皿をアクルの方に差し出した。
「腹減ってんじゃないかと思ってさ。適当なもん貰って来たんだ。」
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