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「……情けねーな。あいつと一緒に、私も行くべきだってのによ。」
少しでも助けを求めたら、エリスはもちろんの事……他の者や走馬に何か言われても音兎は行くつもりだった。行く気だった。
「……ざまぁ、ねぇよな……。」
「音兎……。」
アクルが去り、何と無く残って座っていた音兎がゆっくりと立ち上がり、テントから出るべく歩き出す。
「……情けなくなんか、ねぇって。」
その音兎の背を、キャンスァルは隻腕で抱き締めた。少しばかり音兎の方が背が高いが、今はその背が見た目よりずっと小さく感じた。
「キャン――――ッ」
振り返った音兎の唇が、キャンスァルの唇に触れた。
しばらく、静寂が続く。音兎は驚いた顔で固まり、キャンスァルは顔を真っ赤にしながらゆっくりと顔をはなす。
「あー……いや、そのごめん。その、なんだ？ 音兎がさ、なんっていうか、ほっとけなかったっていうか、いや、えっと。うん！
あ、オレ用意してもらったテントに戻るな？」
自分から仕掛けたくせして急にしどろもどろになり、焦って慌てるキャンスァルに思わず音兎は吹き出した。
「待てよ。自分からしといてそりゃねーだろ？」
キャンスァルの手を掴んで、音兎は笑う。キャンスァルが……というより、大半の者が見た事がない、少女の様な笑みで。
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