115人が本棚に入れています
本棚に追加
「解ったよ。なぁに、その子が産まれてお前が折れそうになったら、私が支えるよ。」
母はそう言って、快活に笑う。父親を。旦那を早くに病気で失い、ずっと一人で育ててくれた母の笑顔に励まされて、真愛娘は、頷いた。
「どうせ、私頼りなんだろう?」
「えっ……いや、あはは。そんな事はないよ母さん。」
二人は笑う。母は、力強く笑っていた。
産まれて来る前日、交通事故にあいその命を散らす等、知るはずもなく。
「早く、会いたいよ。ねぇ? 私の可愛い可愛い、愛留(アクル)」
「アクル?」
「うん、愛に留るで愛留よ?いい名前でしょう?」
「……愛で、あくって読むのかい?」
「細かい事はいいじゃないの。私の真愛娘だって、結構な名前だし。いや、気に入ってるんだけどね?」
あはは、と二人は笑っていた。ずっとずっと笑っていた。
その日の日溜まりは……遥か遥か、遠くに……。
最初のコメントを投稿しよう!