間章の二『三区にて』

2/12
115人が本棚に入れています
本棚に追加
/442ページ
 ここは三区。最も様々な品物が集まる区である。  キャンスァルと音兎は、防壁を通って中に入り、行き交う人々を眺めていた。 「相変わらず、いろいろあるな」  余談だが、この区に来た中で最も質の良い物は、大体は王都でもある九区に運ばれる。 「キャンスァル様」 「うい?」  門番の兵士に話し掛けられて、キャンスァルはキョトンとした間抜け面を兵士に向けた。 「ジェミニア様が、お呼びでしたよ」  うげっ、とキャンスァルは思う。最悪な事態も考えるが……。  ま、まぁ大丈夫だろ。オレ、まだお尋ね者にはなっちゃいねぇはずだしよ。 「……おい」  音兎に話し掛けられて、キャンスァルは、んあ?と間の抜けっぱなしの顔を向ける。 「……なんっつぅ面してんだよオメェ。シャンとしなァ……」  仏頂面でタバコをくわえる音兎に対し、キャンスァルは苦笑を浮かべる。 「そ、それでなんだよ?」 「ジェミニアってなぁ、十二聖護士だろ?」 「おう、そだな。  ……音兎、わりぃけどよ」 「ああ、この音兎様は、しばらく別行動させてもらうぜェ……」  そう言って歩いて行く音兎に、面倒事起こすなよとキャンスァルは苦笑混じりに言った。
/442ページ

最初のコメントを投稿しよう!