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ここは三区。最も様々な品物が集まる区である。
キャンスァルと音兎は、防壁を通って中に入り、行き交う人々を眺めていた。
「相変わらず、いろいろあるな」
余談だが、この区に来た中で最も質の良い物は、大体は王都でもある九区に運ばれる。
「キャンスァル様」
「うい?」
門番の兵士に話し掛けられて、キャンスァルはキョトンとした間抜け面を兵士に向けた。
「ジェミニア様が、お呼びでしたよ」
うげっ、とキャンスァルは思う。最悪な事態も考えるが……。
ま、まぁ大丈夫だろ。オレ、まだお尋ね者にはなっちゃいねぇはずだしよ。
「……おい」
音兎に話し掛けられて、キャンスァルは、んあ?と間の抜けっぱなしの顔を向ける。
「……なんっつぅ面してんだよオメェ。シャンとしなァ……」
仏頂面でタバコをくわえる音兎に対し、キャンスァルは苦笑を浮かべる。
「そ、それでなんだよ?」
「ジェミニアってなぁ、十二聖護士だろ?」
「おう、そだな。
……音兎、わりぃけどよ」
「ああ、この音兎様は、しばらく別行動させてもらうぜェ……」
そう言って歩いて行く音兎に、面倒事起こすなよとキャンスァルは苦笑混じりに言った。
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