間章の二『三区にて』

10/12
前へ
/442ページ
次へ
「オウ。調子はどうだい?」  音兎は、人気の無い路地裏にいる男に声をかける。  完全に人に見えるが、人ではなく魔族だ。 「姐さんっすか、どうしやした?」  快活に話しかけてくる魔族の男、異守(いもり)に音兎はオウ、と呟く。 「オメーの事だ。牛若の野郎がくたばったとか、私らが裏切り者になったとかは知ってんだろ?」 「ええ。非羊さんも殺られちまったみたいっすぜ?」  なに?と音兎は眉間に皺を寄せながら煙草をくわえる。 「……そいつぁあ、マジなんだろうな?アン?」 「非羊さんが、頭吹き飛ばされても生きてられるような存在でもねぇ限りは、マジっすね」 「……」  軽く舌打ちしながら、音兎は奥歯を噛む。なんてこった。 「姐さんは、今魔王様探してんでしょう?」  問われて、音兎は頷く。
/442ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加