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「うっきゃっきゃっきゃっきゃぁ……」
とある断崖絶壁に、猿の様な笑い声が響く。
崖に挟まれた狭い道を、笑い声の主、邪星十二支の一人である擬猿(ギエン)と、十二聖護士であるはずのタリアスが歩く。
擬猿は、タリアスの男性にしては線が細く、女性と見るにしては少々線の太いその中性的な顔を眺めた。
青く、長い髪を後ろで編み、両端が刀となっている剣を持つ彼の横顔を見ながら、さてさてと擬猿は猿顔で考える。
「うっきゃきゃ、魔族ですら来ない様なこの地に、私めを連れてきてどうしようというのですかなぁ?」
まさか、と猿顔を歪ませ怯えたかのように見える顔をして、やたら大袈裟に無駄におどけて見せた。
「この私を始末しようとお考えですかなぁ?嗚呼、これは不味い事になりましたぞぉ~……私、邪星十二支の中でも戦闘という物をとっても苦手としておりますのに……嗚呼~」
そんな擬猿を眺めながら、タリアスは微笑む。
「嫌な方ですねぇ~……そんなつもり、有るわけないじゃないですか。
それに……それはそれで面白そうだと顔に書かれてますよ?そんな演技じゃあ、猿真似にすらなりませんよ」
タリアスの言葉を聞きながら、擬猿はきゃらきゃらと笑うのであった。
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