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パラパラと散る粉雪を眺めながら、しかし、ど擬猿は呟く。
「ずいぶんと寂しい所ですなぁ~……おや?おやおやぁ?」
目の前に、二つの頭を持つ巨大な狼が立ち塞がる。オルトロスと呼ばれる、凶暴で獰猛な狼だ。
「中々の大物がおりますなぁ~……これは、誰も近寄らぬ訳ですよ。何もなさそうでございますし?」
まぁ、と擬猿は思う。この方には関係有りませぬが。
オルトロスの二つの頭に、金色に輝く十字架が浮かび、隣のタリアスに眼を向ける。
タリアスは、両端に片刃のついた剣を持ち、弓を引くような構えをする。無論、弦もないし矢もない。
次の瞬間、オルトロスの二つの頭が吹き飛び、おやおやぁ、と擬猿は笑う。
オルトロスは非常に俊敏で、捉えるのも一苦労な程に速い。
ただ……タリアスの放つあれは光速だ。何の比喩でもなく、光速。
そりゃ、避けられるはずがありませんわな。
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