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リュウはまっすぐに走りだした。
もはや成人の儀などどうでもよかった。
まだ後ろからは我が子を奪われ、怒り狂っているドラゴンの羽ばたきが聞こえる。
リュウは崖に架かる吊橋を渡り、街に向かおうとした。
ズドォン…!!
ドラゴンの放った火球が吊橋を吹き飛ばす。
「そんな…帰れねぇ……。」
リュウはその場で腰が抜け、へたり込んでしまった。
そこから全てがスローモーションに感じた。
口を開け、鋭い牙を剥き出しにし、突っ込んで来るドラゴン。
雷鳴のような轟音が轟き、崩れ落ちるドラゴン。
その後ろから来る黒い炎を纏った男。
「…スイ?」
全てをまるで一年間をかけて見たような気がした。
リュウの視界は狭まり、
やがて…
闇に支配された。
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