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「ふざけるなっ!」  部長の怒声が、夜のオフィスに響く。  いつも女性社員にセクハラ紛いのことをしている部長は、男である私に容赦ない。  今日、私は商品の発注先を間違えるという初歩的なミスをしてしまったのだ。 「っ……申し訳ありません」  オフィスで仕事をしている奴らの視線を背中に感じながら、私は深く頭を下げた。  この仕事を初めて、もう三十年。発注先を間違えるなんて、絶対にありえない。  私は完璧主義者で、商品の発注先も、発注の数も、書類を作るのも、失敗したことなど一度たりともない。  失敗したのは私ではない。私であるわけないじゃないか。  不愉快な部長の説教を聞き流し、私は自分のデスクチェアに座る。  パソコンの画面を見ると、左下の隅にメールのアイコンが表示されていた。それをクリックすると、社内メール専用のボックスが開く。  『受信メール 一件』という表示がなされていて、またクリックすると、本文が表示された。 『大丈夫ですかァ? スッゴい怒られてましたけど~。  部長に目ェつけられてなきゃいいですけどねェ~(笑)』  ふざけた本文を見て、マウスを握る手にギッと力が入った。  
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