春風

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入学式の最中も、少年の事が、頭から離れない ―あの子…確か俺のクラスの列にいたよな― 自分がいる位置からではその子は見当たら無かった それが、何故か無性に歯がゆい 「藤原先生、次、新任の挨拶ですよ」 同期の女性新任教師に声をかけられ、我に帰える 「どうしたんですか?キョロキョロして?」 「いっいえ、何でも有りませんよ」 慌てて否定する 「誰か知り合いの子でも探してたんですか?」 優しげに笑うその女性教師の名前は、阿部幸子(あべ ゆきこ)という、小柄で、肩までのボブが可愛らしい 「あ、いえいえ、そうじゃないんです、気にしないで下さい」 そんな裕司を見て、阿部先生はくすくすと笑う 「藤原先生って面白いですね」 「は…はぁ…」 何だか、今日は笑われてばかりだ
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