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バス待ち。
あと10分弱。
「(最近暖かいなー…春、か。要らんね。)」
マフラー片手に太陽真上。
この上なく心地好い暖かさ。
だけど私はこの暖かさが嫌い。
「あ。」
バス到着。
また30分揺られ自転車置き場へ。
「(やっぱ暖かいよ。風だってもう春の匂い。無条件に和ます。)はぁ」
溜め息一つ吐いて
カゴに荷物入れてサドルを跨ぐ。
さ、帰りますか。
下り坂くだり、
その爽快感を遮るように信号が赤に変わる。
「(うわぁ…)」
あ お 。
ギアチェンジして再出発。
家まではもう一本道。
この上なく漂う春の匂い。
自転車を漕ぎながら感じる風の匂いで分かる。
私の真上には雲一つない空。
太陽だけが露になって暖かさの源として光を放つ。
「ただいまー…」
家ん中に入れば玄関は真っ暗。
一気に光をシャットアウト。
でも春の匂いは消えない。
「あれ、おかえり。早いね。」
驚いてるようで別段気にしてない私共の母上。
「あー、うん。なんか今日半日らしい。」
「ふーん。」
「(興味ないなら聞くなし…)」
部屋に戻って荷物を置く。
家着に着替えてお昼を食べる。
「今日暖かいね。」
「うん。」
「暖房要らないや。」
「そだね。今日は外も暖かいよ。」
「春来たね。」
「…うん。私は大嫌いだけど。」
「なんで?」
「…。」
無条件に幸せなのがいやなだけ。
春ってだけで和まされるのがいやなだけ。
なんか心地好くて苛々しちゃうだけ。
なんとなく自分が素直になれちゃうのがちょっと恥ずかしいだけ。
こんな晴れた日はきみに会いたい。
とかそんなこと普段は言えないくせに、
思わないくせに春だけは私をそうさせるから。
END.
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