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――プルルルッ。
「はう!」
制服のポケットの中の携帯が、騒がしく鳴り響いた。
まるで今までの俺達を監視してたかのような絶妙なタイミングに、恥ずかしくなって俺は勢いよくユノの体から離れると背を向けながら携帯の通話ボタンを押した。
「もっ、もしもし!」
『あ~、ジェジュン?今平気?』
声の主はユチョンだった。
「え?あ、今ちょっと…」
『あ、ごめんごめん。チャンミンが来るまでちょっと暇だったからさ~また明日、学校でね』
「う、うん。じゃあね」
ピッと電源ボタンを押したついでにマナーモードにしておいた。
「ごめんね、ユノ。電話、いきなりだったからつい出ちゃった」
振り返りながら、そう言うとユノはにやりと片眉をあげて俺を見下すような表情をしていた。
げ…この感じ…なんか嫌な予感。
「これで、俺とお前はフィフティ・フィフティだな」
「ひ…、ひふ…?」
「俺達はお互いの弱味やコンプレックスを共有して、やっと対等の立場になれたってことだ」
「は、はぁー!?なにそれっ」
「俺ばかりがお前に慰められるなんて、納得いかなかったんだよなぁ」
「意味わかんない…今までそんなくだらないこと考えてたの?」
「はぁ?お前な、俺の立場になって考えてみろ。生徒にみっともない家の事情知られて、どれだけ俺が今まで肩身の狭い思いをしてきたか…」
「うそ!そんな素振り1回も見たことないもん!」
ユノは、はぁ…とわざと重いため息をついてみせる。
ユノがいつ!俺の家で肩身の狭い思いをしたの!?
いつだって態度はでかいし、偉そうだしむしろ最初の頃より、悪化してる気さえするんだけど…!
「お前に悟られないように、隠してたんだよ」
「うーそーつーきー!まるで我が家のように居座ってるじゃん!」
むきーっ、と猫が逆毛を立たせる時のように反論するとユノはくくっと心底可笑しそうに喉を鳴らして笑った。
「とにかく。俺だって誰にも言ってねぇことを不覚にもお前に知られちまったんだ。これは俺とお前だけの秘密だ。わかったか?」
ユノが俺の上唇と下唇を指で摘んだせいで、アヒル口のようになってしまい言葉を発することが出来ない俺はこくこく、と微かに首を上下させた。
解放されてユノを睨むと、本当に楽しそうに笑っていて…
チャンミンさんもユノの家のこと知らないんだぁ…なんて無邪気な笑顔を見ながらそう思った。
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