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空が……綺麗。
今日が昨日と比べて特にいい天気というわけでもない。
でも、自分が元気で生きていることが今は嬉しくて……同時にとても切なかった。
少ないお小遣いから奮発して、花屋さんで1,500円の花束を買ったあたしは、3日前に訪れた小さな墓地に再び足を向けた。
その日も幸薄そうな初老の女性は墓の前にしゃがみこんでいた。
目を閉じて、愛娘に語りかけるようにじっと手を合わせている姿が、なんだかとてもいじらしい。
「あ……あの!」
一生分の勇気を振り絞ってあたしは声をかけ、女性は顔を上げてあたしのほうを見た。
昨日あれほど邪険にしたにも関わらず、そんな事などなかったかのように彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「アラ、ヨーコちゃんこんにちは。」
昨日はごめんなさい ─┄ 本当はそう言いたかったのだが、あたしの口をついて出たのは別の言葉だった。
「その……お、お墓参りさせて貰って、いいですか?」
女性の顔が、ぱっと明るくなった。
「アラ、お墓参りしてくれるの!?ありがとう。まあ、綺麗なお花まで!良かったねー奈々。お友達がお花をくれるって!」
あたしは花を生け、小さな友人だった少女の墓の前で手を合わせた。
── また会えたね!お花、ありがとね♪
歌うような奈々ちゃんの声が、あたしには確かに聞こえた。
―了―
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