渚、再び ── 2020年

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空が……綺麗。 今日が昨日と比べて特にいい天気というわけでもない。 でも、自分が元気で生きていることが今は嬉しくて……同時にとても切なかった。 少ないお小遣いから奮発して、花屋さんで1,500円の花束を買ったあたしは、3日前に訪れた小さな墓地に再び足を向けた。 その日も幸薄そうな初老の女性は墓の前にしゃがみこんでいた。 目を閉じて、愛娘に語りかけるようにじっと手を合わせている姿が、なんだかとてもいじらしい。 「あ……あの!」 一生分の勇気を振り絞ってあたしは声をかけ、女性は顔を上げてあたしのほうを見た。 昨日あれほど邪険にしたにも関わらず、そんな事などなかったかのように彼女は嬉しそうに微笑んだ。 「アラ、ヨーコちゃんこんにちは。」 昨日はごめんなさい ─┄ 本当はそう言いたかったのだが、あたしの口をついて出たのは別の言葉だった。 「その……お、お墓参りさせて貰って、いいですか?」 女性の顔が、ぱっと明るくなった。 「アラ、お墓参りしてくれるの!?ありがとう。まあ、綺麗なお花まで!良かったねー奈々。お友達がお花をくれるって!」 あたしは花を生け、小さな友人だった少女の墓の前で手を合わせた。 ── また会えたね!お花、ありがとね♪ 歌うような奈々ちゃんの声が、あたしには確かに聞こえた。 ―了―
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