洋子 ── 1990年

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新学期が始まり、咲き誇っていた桜が散り始めた頃、アメリカへ旅立った奈々ちゃんの死を、あたしは母さんから知らされた。 「最期まで頑張ってたそうよ……また元気になって洋子ちゃんと会うんだって……」 涙混じりに話す母さんの声が、あたしには何故かとても遠くで聴こえているような気がした。 あたしは久しぶりに、奈々ちゃんにプレゼントした「浪漫飛行」を聴き、静かに涙を流した。 あたしなりの、小さな友達に対するささやかな── 本当にささやかな葬送だった。
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