渚、再び ── 2020年

3/5
前へ
/90ページ
次へ
「ザッケんなぁぁぁぁ!!」 その後何を叫んだか覚えていない。── 怒りを押さえることも出来ず、あたしはただ無我夢中で男につかみかかった。 あたしの怒りを前にして、なおも男はずっと笑っていた。まるでこの世に生を受けた全人類を嘲笑するかのように── 黒一色だった夜空に藍色が混じり始めた頃、ようやくあたしは目を覚ました。 机の上に突っ伏してそのまま寝てしまっていたためか、身体の節々に鈍く痛みが残っている。 ママがかけてくれた毛布のおかげか、少しも寒くはなかった。 闇の中、そこだけぼうっと四角い光を放っているパソコンを、あたしは恐る恐る覗く。 あたしが眠ってしまった後、Drアザゼルからメッセージが来ていた。自分と合流した後、スマホを海に棄てるようにと書いてあった。 あたしは手早く文字を打ち込み、彼に返信した。 2020/05/22 5:19 ナギサ ドタキャンごめんなさい。 私やっぱり生きて行こうと思います。 いろいろ相談に乗ってもらってありがとうございました。 Drアザゼルからの返事はなかった。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加