出逢いは突然に…

3/12

297人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「俺、絶対精神崩壊するかも…。」 深夜のファミレスで、朱里は溜め息をつく。 「精神科医が何言ってんだよ。で、いつからだっけ新しい病院。」 「あさってから…。」 「新設されんだよな。心療内科が?」 「みたいだね。隆ちゃんいないと不安だわ俺。」 弱音を吐く朱里が隆ちゃんと呼んだのは… 遠藤隆之介。 現病院で、朱里の片腕的存在な心理療法師である。 「てか、朱里医者じゃん。俺は只のカウンセラーじゃん。俺に期待されてもなぁ…。」 「隆ちゃんは俺の精神安定剤なんだって…軌道に乗ったら呼び寄せてやるからな。」 なんて本気で言う朱里に、隆之介がくすくす笑う。 「何でなんだろ?最近また見る頻度が上がってんだよな。」 「また、あの夢の話?」 朱里の夢の話に、耳にタコができるくらい付き合わされてる隆之介が眉をひそめる。 「うん。俺、何かに呪われてんのかな。」 「呪われてると言うより…願望とかじゃね?」 「そりゃないだろ。だって、夢の中じゃ俺いつも女性だしさ…決まって悲恋なんだぜ。」 「実は女になりたいとか?」 突拍子もない事を言う隆之介に朱里は飲んでいた烏龍茶を噴き出した。 ゴホゴホむせる朱里を見ながら隆之介がケラケラ笑う。 「やめてよ隆ちゃん。変な冗談言わないでよ。」 「前世の記憶。」 「へ?」 「もしかしたら、前世の記憶なのかもよ。」 急に真剣な顔で話し出す隆之介に朱里は戸惑う。 「心理学的にはどうなのかなそういうの…。」 「そうやってすぐ、理論化しようとするんだよなお前は…。輪廻転生って知ってる?」 隆之介の言葉に朱里が頷く。 「生まれ変わりでしょ。」 「簡単に言えばな。例えば最初の人生で悲劇な結末を迎えたとするじゃん。その報われない魂は何度生まれ変わっても悲劇しか辿らない。そういうのが輪廻転生。お前の場合それかもな。」 「スゴいね。いつもながらに感心する。」 「感心してる場合かよ!!だから、何回も言うけど…お前は医者で俺はカウンセラー。」 「やってる事って変わんなくね。」 のほほんとしている朱里に一抹の不安を感じる隆之介は大きな溜め息をついた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

297人が本棚に入れています
本棚に追加