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白百合台総合病院。
朱里が今日から着任する病院だ。
「でけぇ…しかも超綺麗じゃん。」
そびえ立つ病院を見上げて…朱里が呟く。
案内されてたどり着いたのは、廊下の一番奥にある。心療内科。
新設の心療内科の医師は朱里を含めて6人。
6人って多いなと思っていた朱里も、
治療の内容を聞いて…
その数の多さに納得した。
末期医療。
もう助かる見込みのない患者に対する心のケア。
それに力を入れる方針らしい。
医長室に入って、ぼんやりと立っていると…
「朱里?」
声をかけられて振り向くと…見覚えのある顔。
知ってるんだけど…
思い出せない。
そんな朱里の様子を見て、男がクスクス笑う。
「相変わらずやなぁ…」
優しいトーンの関西弁。
「横谷?」
「正解!」
横谷公哉。
朱里の医大の同級生だ。
「何だ、君たちは知り合いか?」
医長が微笑む。
「大学の同期なんです。」
横谷の言葉に、
「それはそれは、ホスピス棟に2人常勤する事になってるんだが、神崎と横谷にお願いしようと思ってたからちょうどいいな。お互い切磋琢磨しながら、頑張るように。」
医長の言葉に、耳を疑う。
「え?」
マジで?
そんなシビアなとこに突然?
ホスピス棟って言ったら…末期患者のケアって事だろ?
無理、絶対無理。
なんて、思ってる朱里をよそに、
「はい。頑張ります。」
横谷が元気に答えた。
早速、ホスピス棟へ行くように言われて、
トボドボ歩く朱里の背中を横谷がバシバシ叩いた。
「どないしてん?元気ないやん。」
「末期ケアなんて…俺には重いよ。」
「俺は、もともと…そっちに進みたいと思っとったからなぁ」
「意外。」
「てか、朱里が精神科に進んでるとは思わへんかったわ。」
話をしているうちにたどり着いたホスピス棟は…
病院と言うより…
ホテルみたいな綺麗な建物と内装だった。
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