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「寒いねー。」
「そうだな。」
目の前に広がる白銀の世界。
冷たい、冷たい世界。
「ねぇ、ギル君。」
「何だよ。」
雪のように真っ白な彼は
真っ白な雪と一緒に解けてしまいそうで。
僕の所につなぎ止めておきたかったから
彼の躯を抱き締めた。
「どーしたんだよ、イヴァン。」
「何でもないよ。」
君はほんとに、雪みたい。
何物にも染まるくせに、けして心を許さない。
「雪のことは、知り尽くしてる筈なんだけどなぁ。」
「さっきから、何だよ。」
君はくすり、と笑う。
笑顔なんて久しぶりにみた。
あれ。
何だろう、暖かいよ。
「ギル君。」
「…ん?」
「離さないよ、ずっとね。」
「そうかよ。」
じゃ、精々頑張れよ。
なんて、本気にするよ?
「置いていくぞ?」
「待ってよ!」
暖かい。今までにないくらい。幸せだよ。
目の前に広がる白銀の世界。
冷たい、冷たい世界。
その世界で、握る君の手は
すごく、すごく温かくて
また僕を本気にさせていく。
いつか振り向かせてみせるよ。だからそれまで
何にも染まらないで
僕だけをみて
ね、ギル君。
(きっと君を)
(振り向かせるよ)
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