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*** …はあ、はあ、はあ 息が荒い。まだ数分しか走っていないのに、と心の中で日頃の運動不足さを呪った。 私達の足音の他に、背後から迫り来るゴムにも似た靴の音がショッピングモールに響く。 ショッピングモールは、何故か一般客が1人も見当たらない。 ましてや、従業員でさえ。 彼らは、一体なんなんだろう。私達を追う理由なんて微塵も無い筈だ。 人気のない店内を不審に思いながらも談笑していた私達の背後で突然発砲したのだ。 勿論、驚きと畏怖で急いでその場から離れようと走った。 しかし彼らは…追ってきたのだ。 …それにしても、このまま走っていても埒があかない。 振り返って、干渉を試みるか?いや、しかし… 思考はそればかりを逡巡している。ただ、横から聞こえる彼の荒い息遣いだけが私の冷静さや理知を留めているようだった。 そんな時、運良く目の前のエレベーターが稼働した。 ウィーンと言わんばかりにドアが開く。 当然驚いたが、それと同時に思わずニヤリと笑ってしまった。 『乗るよ!』 『っ、ああ…』 彼が何か言いかけたようだったが、そんな暇は無い。 閉じゆくドアに滑り込むと、ボタンを押した。ドアには物体の衝突反応はなく、そのまま閉じた。 ふぅ… 途端に安堵感が狭いエレベーター内に広がる。 それもそうだ。突然走って、しかも小銃を持った人に追われるという緊迫が続いたのだから。 ふと下に視線を下ろすと、小刻みに震える右手が映った。 『ぁ…』 なんだかんだ言って、やっぱり怖がっているのだと視覚的に意識させられた。 普段の強がりは…なんて、今は関係ないのだが。 すると、視界にもう一つ肌色の物体が入ってきた。 私の手に、彼の手が重なる。 『大丈夫か?』 『…う、うん。』 否定しようにも…身体は無事である事実ことがよぎって肯定してしまった。 そんな私の心情を察するかのように彼はクスッと笑った。 『大丈夫…きっとな。』 きっとって…なんとも曖昧な励ましだな。 まあ、彼らしいと言えば彼らしいのだが… そうこうしているうちに、階を示す赤いランプは右にズレていっていった。 そして、屋上を示す「B1」に灯りが灯る。 ガタンとエレベーターが揺れ、右手の上から彼の温もりも消えた。 『出るぞ。』 端的な言葉に寂しさを感じながらも頷く。 今は、とりあえずこの状況をなんとかしなくては…!!
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