IF

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『デート、って言えばいいんだろ。』 突然、横からの声に振り向く。 幾分止まった血を拭いながら、彼は嶺を睨んでいた。 数秒、静寂が息を詰まらせた。 『わかっているじゃないか…』 口を開いたのは嶺。でも、直ぐに返答は来た。 『わかっていないのはお前の方だ。』 『俺?』 『…どうしてこんなことをした。』 一番の疑問、それが彼の口からぶつけられる。 私は視点を上部に映すと、彼同様に睨んだ。 『…さあ?』 おどけてみせたって…!!どうせ、嶺が…!! 枷があるため、そんな発言は自重せねばならない苦しさ。 『答え…』 ジャキャッ 私が声を発した途端、銃口が…いや、銃自体が増えた。 『ぇ…ぁ…』 全身を刺すような緊迫感。降りかかる視線。 『基本的に、』 と、第三者…この場合銃口を私に向ける7人以外の声が背後から聞こえてきた。 『部活動、及び会社等ではその枠内での恋愛感情は禁止されています。』 そんなの、わかってる。 『それは、日本が秘密主義だから。』 『秘密…主義?』 『そうです。秘密は守らなくてはならない、むしろ…それを無かったことにしなくてはならない、とね。』 無かった…って、まさか… 脳裏によぎった考えに、咄嗟に目を瞑って否定した。 『もう分かったでしょう?』 分かり…たくない。 『…しかし、まあ…なんというか。個人的には好ましくない、ので…ね』 その時、周りが酷く歪んだ。 頭が軋むように痛む。 息を吸ってはならないのに、苦しくて吸う悪循環。無味無臭だから余計悪い。 『お前…なんで…っ!!』 ガチャガチャと鉄塊が落ちる音と呻きが聞こえ… そこで、私の意識は途切れた。
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