第壱話~百鬼夜行~

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~慈乃谷神社~ 「はぁ…はぁ…。危うい所だったぜ。」 三人は無事に神社へと逃げ込んだ。 「ここまで来れば大丈夫。境内には邪(よこしま)な者は入ってこれないようになってるの。剣護さんも上がって」 「ん、あぁ。そうさせてもらうよ」 依成たちは、炬燵に腰を下ろした。 「…先ほどのことでちょっと話したいことがある」 一番最初に剣護が口を開いた。 「ありゃなんだったんだ?」 「うーん…私が考えるに、あの化け物たちは『あの岩』から出てきたと思うの」 依成が考え込みながら答えた。 「ほら、私たちが見つけた時のこと覚えてる?さっきの化け物は、依颯の式神が言ってた『スサノヲが封じた魑魅魍魎』なのかも」 「…間違いないね」 依颯の懐から二つの勾玉が出てくる。 「みんなが気を失ってた間にオイラたちは見てたんだが…あの岩が割れたとき、中から凄まじい妖気が飛び散ってどこかに行ってしまった。その後、岩に残ってた妖気が山全体に広がって、あの天邪鬼が出てきたんだ」 勾玉の黒い方(愛称:マガー)が説明した。 「飛んでいった方の妖気は何者かも、何処に行ったかさえ分からなかったんだけどね」 白い勾玉(愛称:タマー)が言う。 「やっぱりあの岩がそうなのね。ところで依颯、あの時言ってたマガーとタマーって…」 「そ、この子たちの名前!」 依颯はキッパリ言った。 マガーとタマー。この二人は『双子神』(うなりがみ)であるらしく、宿した際に名を聞いたのだが、依颯は長たらしくややこしいという理由で現在の愛称を付けたという。 「まぁオイラたちも既に馴染んだから、この名前に問題はないけどね」 「剣護さん。もう朝になりそうだけど、しばらくここで休んでいってよ。外にはまだ化け物がいるかもしれないし…」 「そうだなぁ…んじゃ、お言葉に甘えさせてもらうぜ」 深夜から早朝にかけての短い時間ではあったが、三人は身を休めることにした。
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