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秋の境内、巫女装束の一人の少女が箒を片手に落ち葉を掃いている。
「ふぅ…こんなもんかな」
参拝道にたまった落ち葉をわきに掃き集め、一息ついた彼女の名前は慈乃谷依颯(しのやいぶき)。
「そろそろ冷えてきたし、戻ろう…」
依颯は下駄を脱ぎ、神社の中に戻っていった。
一方、慈乃谷神社の茶の間。
「はぁ~。やっぱりお茶はおいしいわぁ」
こたつに座り、のほほんとお茶を楽しむ彼女は慈乃谷依成(しのやいなり)。
真面目ではあるがどこか抜けている、依颯の姉である。
「お姉ちゃん、終わったよ!」
ガラッと障子が開き、依颯が入ってきた。
「あっ依颯、お疲れ様。お茶淹れてあげるね」
依成は茶碗を用意し、急須でお茶を注いで手渡した。
「はい」
「ありがと!」
依颯は茶碗を手に取り、熱そうにすする。
「…参拝客、来ないね」
しばらくして依颯が口を開いた。
「ここのところ少し寒くなってきたからねぇ。皆あまり外に出たくないからじゃない?それか…神頼みする必要がないくらい、皆が幸せに暮らしてるってことだよ」
依成が微笑みながら言った。
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