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ガランガラン…!
賽銭箱の上から吊された、大きな鈴の音が聞こえた。
「あっ、誰か来たのかな?」
神社の外には、一人の男がいた。
「剣術の上達を願い申す…」
賽銭を投げ入れ、手を合わせる彼は畠山剣護(はたけやまけんご)。
強い侍になることを夢見ているらしい。
「あっ、剣護さん」
依成が顔を出す。
「おぅ、依成ちゃんかい!」
剣護と慈乃谷はかなり前から縁があるようだ。
「すまねぇな、ここ最近来れなくて…」
「ううん、そんなに気にすることないわよ。…そうだ、御神籤(おみくじ)引いてく?」
「おっ、いいねぇ!引かせてもらうよ」
剣護は御神籤を一つ手にとり、開けてみた。
「どれどれ…げぇっ、凶かよ!?縁起悪いぜ」
「まぁまぁ、気を落とさずに。その凶を乗り越えてこそ、一人前のオトコでしょ?」
「うーん。ま、それもそうだよな。俺の命運は俺が決めるってもんだ…なんてな。じゃ、また今度来るぜ!」
「うん、ありがとね!」
剣護は背中を向け、気さくに手を振り去っていった。
しかし───
この御神籤が示す通りの出来事が起ころうとは、剣護も、依成ですらも思っていなかったのである…
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