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「う…」
ズキンと頭が痛む。
あぁ…階段から落ちたんだったな。
そうだ!!高杉は!?
俺はガバッと起き上がった。
「あ…れ?」
しかしそこに高杉の姿は見当たらない。
更に言うとそこは土の上でなく布団の上。
どこかの宿のようだ。
「誰かが運んできてくれたのか…?」
そう土方が呟いた時…
『ガラッ!!ピシャンッ!!』
煩い音を経てて襖が開き見知らぬ男が入ってきた。
二十代半ば位だろうか。
くりくりとした大きな瞳に長髪女顔で身長の低い彼は町娘を連想させる。
初見した者ならば綺麗な女だ、と思うだろう。
しかし俺は日頃女顔の総司を見ているのですぐに分かった。
「あ、目ぇ覚めたの?」
当たり前のように入って来て第一声が溜め口。
少々苛ついたが助けて貰ったことに変わりはないので我慢する。
「も~びっくりしたよ。朝に散歩してたらびしょ濡れで倒れてんだもん。あ、これ着替えね。」
渡されたその着物は赤地に派手な金銀の染めをあしらった一言で言うと奇抜なもの。
こいつのかと思い、改めて男を見ると淡い青に黒い帯といった極めて珍しくないものを着ている。
(嫌がらせか?)
「…ありがとよ」
ムッとしたが用意してくれた物を断る訳にもいかず、俺は素直に受け取った。
「ところで今はいつ頃か分かるか?」
「あぁ多分まだ四刻(朝八時)頃じゃないかな?」
男はニコニコと笑いながら、早く着ろと言わんばかりに着物を俺にぎゅうぎゅうと押し付ける。
俺は仕方無く着替えようと布団を剥いだ。
「…あ?」
自分の着物を見て眉を寄せる。
それは俺の黒い着流しではなく、淡い青の斜線が入った紫の綺麗な着流しだったのだ。
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