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学生時分、その小説を読んだ時に気付けなかったこと、新しい発見、作家の苦悩、……いつの間にか私は、その小説に夢中になっていた。一度読んだにも関わらず、全く別の小説に思えたのだ。「小説には“出逢うべき時”がある」と評論家か何かがテレビで言っていたのを思い出す。確かに、と私は思う。
――その―退廃美的―小説を読み終えふと気が付くと、窓から差し込む光は橙色の西日へと変わっていた。館内は電灯に照らされ、閉館時間が迫っているのを自分に伝えているようだった。
そんなに尺の長い小説でないとはいえ、夢中になり過ぎたようだ。私は昼食も摂っていないのだ。その事実に気付くと、自分が酷い空腹感に苛まれているのを知る。
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