はしがき

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 すっかり春めいた四月の並木道は、心躍るような陽気とあわせて、実に心地の良いものだった。新生活、新入生、新社会人、……何にでも「新」が付く。新しい生命の息吹きと、それを祝福する雰囲気がそこかしこに漂っている。  春うらら、思い立っての散歩は正解だった。暖かな日差しは、自分をも祝福してくれているように感じた。そして、そう思っているのは私だけではないだろう。  街路樹の根元でうつらうつらしてる猫も、その街路樹の新緑芽吹く枝でさえずる小鳥達も、並木道を歩く他人の表情にも、それは見て取れた。皆が幸せであれ、降り注ぐ日差しがそう言っているようだった。  
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