はしがき

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 館内は自分が昔から抱いていたイメージとは違っていた(昔ながらの総合病院のように清潔だが冷たい、そんな様相を思い描いていた訳だが)。  荘厳な雰囲気はそのままだが、整然とした清潔感が在り、温かみがある。床に薄い絨毯が敷き詰められている所為かもしれない。独特の静寂も不快なものではなかった。分離され秩序だった沈黙ではなく、融和、雰囲気に溶け込んだ沈黙のように思えたのだ。  等間隔に並べられた本棚は、威圧を感じさせるものではない。幼少時分には、その棚に無機質的圧迫感を強いられる印象を抱いていたのだが、今はどちらかというと“迎えられた”という気にさえなる。悪くないな、と私は思った。  
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