3人が本棚に入れています
本棚に追加
コンコン…コンコン…
眠気で淀んでいた意識を現実に引き戻すノックの音。
「今日も休ましちゃくれないか…。」
そう呟いて青年は窓を開けた。
ヒュウと一陣の風が吹き抜ける。青年は直ぐに窓を締め、後ろへ向き直った。
「いらっしゃい。で、依頼内容は?」
部屋にはいつの間にか、1人の若い女が座っていた。
「あなたがデスラー・慶一郎さんですか?私、人伝に話を聞いて来たのだけれど…私を見て驚かないってことは、やっぱり噂は本当なんですね…。」
若い女は目を丸めて感心したように驚ろいている。
青年はウンザリしたような表情を作って続けた。
「最近あなた達みたいなのに好評なようでね…。毎晩眠る暇も無いよ。」
女はそうでしょうねと笑顔になったが、ハッとしたように申し訳なさそうな表情を作った。
「あっ…ごっ、ごめんなさい。お疲れのようなら、また今度に…」
「いや…いいよ。どうせあなたを断ったとこで違う客が来る。早く済ませたい。内容を話してくれるかい?」
若い女はコクリと頷き、俯いたまま話を始める。
「デスラーさんは3ヶ月前の事件をご存知ですか?」
知らないはずは無い。デスラーの住む小さな街へTV局の取材が入るのは、非常に珍しいことだ。
「ああ…。報道を見るだけで吐き気がしたよ。」
「あの…あの事件の被害者の顔を覚えていますか?」
デスラーは話す女の目をじっと見つめた。
「ああ良く覚えてる…。3ヶ月前の事件。凄惨な殺され方をした女子大生、矢内菜々子。目の前のあなただ。」
目の前の若い女、矢内菜々子の姿が一瞬ぼうっと揺らいだ気がした。
最初のコメントを投稿しよう!