第一章『アルエ・カルア』

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 誰も寄り付かない山奥。そこに静かにそびえ立つ巨城がある。そこの主は闇の女王と言われる闇の賢者その人だ。城には人形使い(ドールマスター)の力を使って魔力で動かしている人形が多数徘徊ている。ある人形は畑を耕し、ある人形は城を掃除するなどしていた。そんな城の中で自らの意思で動くものが二名と一体。闇の賢者とその弟子、そして謎に包まれた意思を持つ魔動人形だ。 「シグ、味身をしてくださいますか?」 「うん、わかった」  城のキッチンでは弟子であるシグと、意思を持つ人形のキサが料理をしていた。ちなみに人形と言っても、キサの見た目はどう見ても人間である。 「うん、おいしいよ」 「では盛り付けておきますので、アルエ様を呼んできてください」 「わかった」  シグはキッチンを出るとまっすぐ寝室へと向かう。巨城でありながら、この城には寝室が一つしかない。寝室には大人三人が余裕で寝られそうな大きなベットがあり、そこに美しい女性が眠っている。 「アルエ、ご飯でできたよ」 「んー、もう少し」 「もうキサが待ってるよ」 「…わかった。起きるから」  目覚めた女性こそ世界に恐れられ、この城の主でもある闇の賢者『アルエ』である。 「はぁ…お前が来る前は起きる時間なぞ適当だったのに」 「それって体によくないよ」 「妾は不老不死、健康なぞ気にしたことないわ」  文句を言いながらも、シグの後について部屋をでてキッチンへと向かう。 「おはようございます。アルエ様」 「ああ、今日も美味そうじゃな」 「ええ、シグと二人で作りましたから」  シグがこの城に来てからは、料理はいつもシグとキサが作っている。 「さて、いただくか」 「いただきます」  テーブルに着くと二人は料理を食べ始める。キサは人形のため食事を取らないので、側で控えていた。
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