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「シグ、今日は何をするつもりじゃ?」
「んと、もう少し闇の魔力を操れるように修行しようかと」
「そうか、だがあまり急ぐ必要はない。特に闇の魔力はゆっくり丁寧にな。間違って大罪に目覚めぬように気をつけるんだぞ」
「…大罪?」
「ん…? 博識のお前が大罪をしらないのか?」
シグは学校にいたころに図書室にある魔法書を読みつくすなどして、一般人よりも知識は高い方だ。
「アルエ様、いくら学校でも闇の本は少ないのではないですか? 普通の人は闇の力は使いませんし」
「そうじゃな。…シグが闇の魔法使いとなるなら教えておくべきか」
食事を取り終わり、お茶を飲みながらアルエは天井を見つめる。
「人の七つの大罪を知っておるか?」
「それって、暴食、嫉妬、怠惰、色欲、強欲、傲慢、憤怒のこと?」
「そうじゃ。そして、闇にはこの大罪になぞられた七つの力が存在する。ちなみに、妾は憤怒の闇を宿しておる」
しかしアルエは天井を見上げているというより、どこか遠くを見ているように見えた。
「大罪の闇は強大だが、それぞれ危険(リスク)が伴う。まあそもそも力に目覚める者も少ないのだがな。妾は、お前には純粋な魔法使いで居て欲しい。大罪の闇に囚われることのない強い魔法使いにな」
「そんなに、危ない力なの?」
「ああ、あれは心の弱いものに取りつく化け物だ。闇に支配されれば他の賢者や王族に消されてしまう。妾も支配されていた。復讐という闇にな」
「…だから、闇の女王って呼ばれてるの?」
「そうじゃ。向かってくるものは容赦なく滅した。人間は妾を恐れて向かってくる。だから多くの人間を滅したのだ。復讐を果たし、憤怒の闇を抑えられるようになったから賢者なぞしているがな」
シグが生まれる前、わずか二十年ほど前の出来事。今の子供たちは親が恐れているので闇の賢者を恐れている。だが、実際に何かをされたわけではない。
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