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「フィールと言ったか、あのお姫様は」
「シグの幼馴染の子ですか?」
「ああ、あの子はシグを好いていた。シグが戻りたいと言えば、あの子は喜んで居場所を用意するさ。自分の側にな」
まだシグが学校にいた頃、『フィール・ジハール』という隣国の姫とともに修行に励んでいた。そして彼女はシグのことをずっと想っている。
「それに、シリスもおる。奴もシグの才能に眼をつけていた。奴がその気になれば今からでもあの子を光の魔法使いにできよう。光の賢者である奴なら、できないこともない」
シリスはシグが通っていた魔法学校の校長であり、アルエと同じ賢者の称号を持っている。アルエが現れる前は最強と謳われていた賢者だ。アルエとシグを引き合わせた張本人でもある。
「でも、あの子この道を選びました。それは事実ですよ」
「わかっておるがあの子の精神が不安定な今、力も不安定じゃ。今なら、まだ道は変えられる。…妾の真実を知って、その道を変えてしまうかもしれん」
「…アルエ様、そこまでシグのことを」
「うるさい。…あの子には側にいて欲しいだけじゃ。お前もそうであろうに」
だがその時、アルエの影から人型の影が出てきた。絶対種と言われる『影を歩く者(シャドー・ウォーカー)』だ。魔力を喰らうという以外は謎に包まれた存在である。
「どうしたのじゃシャドー?」
(…………)
「は! シグが城を出て行ったじゃと!」
シャドーは何も声を発していないが、アルエには声が聞こえるようだ。
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