第一章『アルエ・カルア』

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「フィールと言ったか、あのお姫様は」 「シグの幼馴染の子ですか?」 「ああ、あの子はシグを好いていた。シグが戻りたいと言えば、あの子は喜んで居場所を用意するさ。自分の側にな」  まだシグが学校にいた頃、『フィール・ジハール』という隣国の姫とともに修行に励んでいた。そして彼女はシグのことをずっと想っている。 「それに、シリスもおる。奴もシグの才能に眼をつけていた。奴がその気になれば今からでもあの子を光の魔法使いにできよう。光の賢者である奴なら、できないこともない」  シリスはシグが通っていた魔法学校の校長であり、アルエと同じ賢者の称号を持っている。アルエが現れる前は最強と謳われていた賢者だ。アルエとシグを引き合わせた張本人でもある。 「でも、あの子この道を選びました。それは事実ですよ」 「わかっておるがあの子の精神が不安定な今、力も不安定じゃ。今なら、まだ道は変えられる。…妾の真実を知って、その道を変えてしまうかもしれん」 「…アルエ様、そこまでシグのことを」 「うるさい。…あの子には側にいて欲しいだけじゃ。お前もそうであろうに」  だがその時、アルエの影から人型の影が出てきた。絶対種と言われる『影を歩く者(シャドー・ウォーカー)』だ。魔力を喰らうという以外は謎に包まれた存在である。 「どうしたのじゃシャドー?」 (…………) 「は! シグが城を出て行ったじゃと!」  シャドーは何も声を発していないが、アルエには声が聞こえるようだ。
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