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鞘から抜いた村雨を、鉄之助は右手に持ちながら話し掛けた…
『-おっちゃんは…その…名前とかあんの?』
《-…ワシも『人として生きておった頃』は…『戦国の覇王』と恐れられたものよ…》
『-せっ…『戦国の覇王』っ!?…おっちゃんて一体っ…』
戦国の覇王…その言葉に鉄之助は、憧れの眼差しで村雨を見つめる…
《-フフ…聞いて驚け鉄…よっ!!》
『-うっ…うん…っ!!』
鉄之助はワクワクしながらゴクリと喉を鳴らす…っ!!
《-我こそは覇王…またの名を第六天魔王…織田信長よっ!!…ハッハッハッ!!》
鉄之助は首を傾げ、キョトンとした表情で一言…
『-…………誰?』
鉄之助の言葉に…信長は間髪入れる事無く言うっ!!
《-なっ…おっ…お前っ…ワシを知らぬのかっ!!?》
『-知らね…』
『-そっ…その本にはっ…お前がさっき読んでいた本にワシの事は書いておらぬのかぁっ!!?』
『-全然…秀吉の話だったら…』
《-たっ…たわけがぁっ!!…サルの話があって何故ワシの話が無いっ!!ええい…気に食わぬ…この本を書いた無礼者を今すぐ打ち首にせよっ!!鉄っ!!》
『-落ち着いてよ信長のおっちゃん、無理だよそんなの…て言うかさ…おっちゃん何で『刀に取り憑いてる』の?』
《-っ……!!…これは取り憑いているのでは-》
-スパァンッ!!
と、突然鉄之助の部屋の襖が勢い良く開けられたっ!!
『-オラァっ茶ボウズ!!テメェの隊服をこの沖田様が…ワザワザ持ってきてやったぞっ!!今晩メシ奢れっ!!』
いきなり部屋に現れた沖田に顔を向け、鉄之助は村雨を握ったまま呆然とする…っ!!
『-…あ…?何やってんだよお前?』
『-えっ…いや…あのっ…』
『-おっ、刀買ったか』
沖田は鉄之助に歩み寄ってしゃがみ込み、隊服を畳に置いて村雨をまじまじと見つめ始めた…
『-~……っ…』
…突然やって来た沖田に頭が真っ白な鉄之助…自分が今まで刀と話していたなど言える筈が無い…
《…………》
-まっ…まさかおっちゃんの事バレてる…!?いやまさかっ…!!
『-良い刀だな…大事にしろよ?』
鉄之助にそう言って沖田は立ち上がり、襖に手を伸ばす…
『-はっ…はいっ…!!』
良かったバレてないと安心する鉄之助…
『-明日は忙しいから…サッサと風呂入って早めに寝ろよ…じゃあな』
沖田は襖を開け、鉄之助の部屋を後にした…
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