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それを聞いた鉄之助は、思わずギョッとした表情をして立ち竦む…
『-局長と…副局長が…?』
鉄之助は稽古道場を後にして…沖田と共に局長部屋へと向かった…
……………………
…し~~~ん…
二人がこの局長部屋に入ってから…誰一人として言葉を発する事無く…既に10分以上が経過していた…
腕を組み、この重苦しい空気に耐えきれず…目を閉じて寝たフリをする近藤局長…
その横で天井を見つめながらタバコを楽しむ沖田…
そして…その二人の前にお互い睨むように見合う正座した鉄之助と土方…
その静寂を…土方の『第一声』が断ち切った…
『-鉄之助よ』
名を呼ばれた鉄之助は、ビクッと体を震わせながら返事をした…
『-っ…ハイっ…!!』
『-…お前は『何を考えて』いる?』
『-……っ……!?』
『-何時…誰がお前に『沖田と稽古に励め』と言った?』
『-…っ…っ…!!!!』
怒気の籠もった土方の言葉に鉄之助は俯き、恐怖からか目を瞑った…
『-それも小姓として与えられた業務を疎かにしてまで…
お前は…何を考えているっ!!』
鬼の様な形相で土方は鉄之助に怒鳴る…
そして鉄之助は、肩を小刻みに震わせながら口を開いた…
『-お…オレだってっ…』
『-……………』
鉄之助を睨みながら聞き入る土方…
『-オレだって新撰組の隊士なんですっ!!…良いじゃないですか稽古の一つや二つっ!!!』
鉄之助は土方に叫びながら、両膝の上に置いた両手で袴を強く握り締めた…
『-業務を疎かにしたのは悪いと思ってます…
けど…毎日お茶入れたり雑用するだけの日々ばっかりじゃ…強くなんて…なれないじゃないですかっ!!』
『…………………』
沖田はただ二人のやり取りを傍観し、タバコを吸いながら鉄之助を見守る…
『-分かった、もう良い』
土方は眉間に皺を寄せながら目を瞑り、あっさりサラッと答えを鉄之助に返した…
『-…っ!!!?』
しまった言い過ぎた…と、鉄之助は後悔する…
熱くなってしまった自分を悔いて…クビを覚悟した…
そして…土方がゆっくりと口を開く…
『-本日をもって…』
『-……っ…!!』
今日限りで新撰組隊士では無くなる…鉄之助は最早諦めていた…
-やっぱ…クビ…だよなっ…
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