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From Yuto
穴を降下していく。
風はない。
胸に下げた懐中時計を開く。
中は文字盤も針も歪んでいてはっきりと時刻を読み取ることなど普通の人間には出来そうもない代物だ。
「ん...ちょ~っと遅くなったかな?」
今俺は7の国に向かってる。
7の国はこの穴の向こうにある。
俺は陛下に許しをもらってるから
7の国と人間の世界を行き来できる。
穴の中には人間の感情から生み出されたモノがたくさんある。
まぁあっちにつくまでは全部実体のはっきりしないただの光の結晶だけど。
これが7の国に到達すると陛下の力で浄化される。
これを俺達は“7の力”って言ってる。
こうやって人々の感情が浄化されなくなったら、人間は感情の制御が効かなくなってしまう。
だから俺達はこうやって人間の方行ったり、こっち帰ってきたり、忙しくやってるわけ。
でもまさか人間を国に連れていくことになるとは思いもしなかった。
「あぁ、やっぱり向こうに着くまでは意識、保ってらんないんだな。」
腕の中でぐったりしている少年を見つめる。
実に美しい少年だ。
肌は陶器のように白く、透けてしまいそうだ。
閉じた目からは長いまつげが伸び、影を作っている。
すっと通った鼻筋に、きゅっと結ばれた桜色の唇は見るものを一瞬にして虜にする。
思わずじっと見てしまう。
「おーい。」
完全に意識を失った彼からの反応は伺えない。
苦笑いして視線を下方へ向ける。
入口が見えてきた。
「もうすぐ着くからね。」
俺達の…アリス。
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