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「ああ。死ぬのなら、武士として剣と共に、『闘い』の中で死ぬ。
……それが出来なかった近藤さんや総司のためにも、俺は最期まで闘わなくちゃならねぇ……戦地を去るわけにはいかない」
「だが、土方。今戦地を去ったとて、誰がお前たちを責めると言うんだ? あんたたちは十分過ぎるほど闘い、傷付いてきたはずだろう? 少し早めに離脱したって──……」
言葉の途中で、土方が“フッ”と口元に僅かな微笑を浮かべたことに気付いて言葉を止める。
「ここで戦地を離れるのは“剣客”としての俺を殺すのと同じで、そんな事をすれば俺は近藤さんや総司たちに合わせる顔がねぇ」
それ以上は何も言えなかった。こいつの性格も考え方も、幾度も剣を交え、意見をぶつけ合ったオレにはよくわかる。
だからこそ、結果の見えている戦で死なせなくはなかった。
方法や信じる正義は違っても、この国のことを想い、戦って来たのは同じなのだから。
「なら、死ぬなよ」
これ以上は無意味だと判断し、説得を諦めてそれだけ返す。
──諦めた……?
否。こいつが戦場を離れないであろうことなど、初めからわかっていた。
わかっていてこの話を振った。
「死ぬつもりはない。散るなら戦場で散ることを望むが、今散るつもりはないさ。新しい時代を見て、確かめる。維新でこの国がどう変わるのかを。
お前との決着も着けてないしな」
「言ったな? 生き残れよ。お前は新しい時代に必要な人間だ。
お前が死んで、決着が着かんままなのも気に触る」
おそらく、土方の意志を曲げられる者など、居はしない。誰が止めても、誰が戦場を去るよう言ってもだ。
ならば死なぬと信じるしかないだろう。
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