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勤皇派志士であり、新政府軍の人間であるオレが敵方の、それも新撰組副長──今は総帥か──の身を心配するのも妙な感じだが、新しいの時代には土方のように、根のしっかりしていて、強くしっかりした意志を持った人間が必要なのだ。
だから死なせなくなかった。死なせるわけには行かなかった。
新しい時代の、未来のために。
「死なないさ。俺は新撰組の副長だぜ?」
微笑しながら言う土方は“今は旧幕府軍陸軍奉行並だが”と言葉を続ける。
「だが、状況が状況だからな……。とにかく、死ぬんじゃねぇぞ? まだ、決着もつけてねぇんだからな」
土方に背を向ける。
「決着を着けるまでは死ぬなよ。……約束、だぜ、好敵手(ライバル)さん」
「ああ、約束だ。
好敵手(トモ)との約束は、必ず守る」
土方もオレに背を向けた。
そして、オレたちはそれぞれの戦地へと向かった。
生き残り、決着を着けるという剣客としての『約束』を交わして。
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